閉ざされた庭

ジュリアン・グリーンの『閉ざされた庭』(角川文庫、1955年)が上巻だけしかないのが気になっていたが、先日アマゾンに注文したのが届いた。本当は下巻だけ買いたかったのだが、あいにく上下そろったやつしかなかった。つまり上巻がダブってしまうのだが仕方がない。たぶんこれで上巻あるいは一巻だけしかない本はなくなったと思う。前からあったものの方が少しはきれいなので、それと、今度来た下巻をさっそく合本にした。
 巻末に細い万年筆で、「situation が J. Cronin “Hatter’s Castle” に非常に似ているし、作風も似ている」などと書いている。まぎれもなく私の筆跡だ。昭和三十年といえば、中三か高一のころである。下巻もあって、最後まで読んだのだろうか。まったく記憶にない。
 J. グリーンは1900年生まれのフランスの作家だが、パリ生まれで両親は英国系アメリカ人。この本の原題は、女主人公の名「アドリエンヌ・ムジュラ」で、「閉ざされた庭」は英訳された際の “Closed Garden” から来ている。一時期、律儀にカトリック系作家の物をしきりに読んだ記憶がある。まずグレアム・グリーン、モーリャック、クローニンそしてこのJ. グリーンである。今から考えるとおかしな話だが、そのころその作家がプロテスタントであるかカトリックであるかに、やけにこだわっていた。
 ついでに思い出したが、そのころ「カトリック生活」という雑誌があり、その裏表紙に映画のランクづけが表になっていて、映画についてもそれがカトリックの教義に反するかどうかが基準になって五段階ほどに分類されていた。面白い映画、話題になった映画が、ほとんど下から二番目は最後に分類されていた。
(今晩は眠気がひどいので、続きは明日にします。)

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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