ジュリアン・グリーンの『閉ざされた庭』(角川文庫、1955年)が上巻だけしかないのが気になっていたが、先日アマゾンに注文したのが届いた。本当は下巻だけ買いたかったのだが、あいにく上下そろったやつしかなかった。つまり上巻がダブってしまうのだが仕方がない。たぶんこれで上巻あるいは一巻だけしかない本はなくなったと思う。前からあったものの方が少しはきれいなので、それと、今度来た下巻をさっそく合本にした。
巻末に細い万年筆で、「situation が J. Cronin “Hatter’s Castle” に非常に似ているし、作風も似ている」などと書いている。まぎれもなく私の筆跡だ。昭和三十年といえば、中三か高一のころである。下巻もあって、最後まで読んだのだろうか。まったく記憶にない。
J. グリーンは1900年生まれのフランスの作家だが、パリ生まれで両親は英国系アメリカ人。この本の原題は、女主人公の名「アドリエンヌ・ムジュラ」で、「閉ざされた庭」は英訳された際の “Closed Garden” から来ている。一時期、律儀にカトリック系作家の物をしきりに読んだ記憶がある。まずグレアム・グリーン、モーリャック、クローニンそしてこのJ. グリーンである。今から考えるとおかしな話だが、そのころその作家がプロテスタントであるかカトリックであるかに、やけにこだわっていた。
ついでに思い出したが、そのころ「カトリック生活」という雑誌があり、その裏表紙に映画のランクづけが表になっていて、映画についてもそれがカトリックの教義に反するかどうかが基準になって五段階ほどに分類されていた。面白い映画、話題になった映画が、ほとんど下から二番目は最後に分類されていた。
(今晩は眠気がひどいので、続きは明日にします。)
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※本文中の太字、朱書き、アンダーライン、マーカー等の処理はすべて、死後、息子によって為されたものです。
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