ダイジョウブは魔法の言葉

今日のお昼過ぎ、ちょうど昼食を食べようとしたとき、かなり大きな地震があった。とりあえず美子の側に行き、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と手を握ってやったら、別に怖がりもしなかった。以前なら地震を異常なまでに怖がっていたことを思うと、この事態を喜んでばかりいられないのかも知れない。ともあれ速報によれば浜通り地方は震度5弱だったそうだが、どこにも被害が出なかったのはなによりである。
 さっそくお見舞いのメールが名古屋のH君、東京のH. Aさんから届いた。ということは地震速報は全国に向けて送られたのだろうか。それにしても以前と比べて地震の回数が多くなった気がする。
 地震とはまったく関係ないと思うが、今日のバッパさん、かなり頭が混乱していて、訪ねてくるはずも無い従妹の来訪を言い張って、だれも来ていないよ、となんど言い聞かせても承知しなかった。ボケがかなり進んだのだろうか。これが一過性のものであることを祈るしかない。 
 美子も、半年以上、大の方の粗相が無かったのに、夕食前しくじってしまった。失敗の自覚があるのが救いといえば救い。こういう事態にもあわてず、狼狽しないようにならなければだめだろう。毎日の平安が、まるで薄氷の上のように頼りないものであることを、久方ぶりに実感させられた一日であった。自分に対しても、美子に言った言葉を繰り返そう。ダイジョウブ、ダイジョウブ!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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