みみっちい話

「みみっちい」という言葉の語源は「めめしい」から来ているのではないかという柳田国男による説と、「細(ほそ)いミミズみたい」に「細(こま)かい」という意味から「みみっちい」となったという説の二つがあるようだ。しかし言いたいのは語源についてではない。私自身がこの数日間たどった迷いと決断を言い表す言葉として思いついただけである。
 この猛暑の中、『風景と物語の創造 モノディアロゴス第XⅡ巻』の印刷・製本に没頭していたが、ここに来てちょっと困った問題が持ち上がったのである。つまりこれまで使ってきたコピー用紙が底を突き、新たに買い足そうとしたところ、その再生紙白色度六〇パーセントのものは在庫切れになっていた。それでしかたなく別の紙屋さんから、同じく再生紙(古紙割合七割)を購入したのだが、前のものより白色度が少し高い(白い)が滑らかな感じで印刷の乗りもよい。これはいい買い物をしたと喜んだはいいが、出来上がった一冊を計ると、五〇〇グラムを僅かに超える。つまりこれまでの三〇〇円から一気に(でもないか)五〇円も送料が高くなる。
 紙代そのものはこれまで五〇〇枚四三二円だったものが三二〇円と安いのだが、送料のことを計算に入れると(なにやらみみっちい計算をしたうえで)少し割高か。でも少し色白で艶も印刷の乗りもいいことを総合的に(?)考えると今度の紙を使った方が良さそうだ。
 となると、何も収録作品をケチることはないわけで、本巻の締めとして「京大有志の会・声明書のロシア語版について」を急遽加えるべきであろう。つまり本日付を持って印刷製本されるものは第二版ということになる。すでに御手元に第XⅡ巻をお持ちの方は、どうぞその点申し訳ありませんがご理解・ご寛恕のほどよろしくお願いします。

                           二〇一五年八月二日記

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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