嬉しい話のてんこ盛り

最初はルルドの聖水の話である。
 ルルド(Lourdes)は、フランス南西部、スペインとの国境に近い小さな町だが、1858年に聖母マリアが三人の薪拾いの少女たち(そのうちの一人は美子の洗礼名でもあるベルナデッタ)の前に出現して以来、カトリックの巡礼地となり、毎年約6万人の患者や病人を含む600万人の巡礼者や観光客が訪れているそうだ。
 それが一躍評判となったのは、ノーベル・生理医学賞を受賞したアレクシス・カレル博士が1902年に、巡礼団付き添い医師として,ルルドを訪問した際、重症の結核性腹膜炎の少女、マリ・バイイが聖水を浴び,急速にその症状が回復した事実に遭遇したからだ。そして、この時の事例を、「ルルドの奇跡」が実在したとして、リヨンの医学会で発表。爾来ここの聖水は世界各地に大切に運ばれ拡散している。

 わが貞房文庫に彼の著作二冊あり。
  ルルドへの旅・祈り(中村弓子訳)、春秋社、1991年、6刷。
  人間この未知なるもの(渡部昇一訳)、三笠書房、1994年。

 この聖水を昨日、頴美ちゃんが教会から少量だがもらってきたのだ。もちろんお爺ちゃんの皮膚炎のためである。
 さてこの奇蹟の水を何としよう?これまでの数えきれないほどの数の奇蹟受益者のように熱い信仰に燃えているなら、躊躇なくその聖水を先ずは両腕の患部に薄く塗るであろう。しかし如何せん、この爺ちゃんそれほど信仰篤き人ではない、いやもっとはっきり言えばその資格が無いのだ。かといって市販の薬のように気安く塗るわけにもいくまい。透明の小さなガラスの器に密閉された聖水を机脇に置いて、時おり有難そうに眺めるだけだ。(ウソつけ! さっそく両腕に薄く塗ったくせに! バレたか)
 次は母方の従弟たちのことである。数日前、とつぜんばっばさんの末の弟叔父さんから久しぶりに電話があり、それをきっかけに母方の従弟たちとの交流を復活させたいとの熱い思いが湧き出てきた。これも寄る年波のせいと言えばそうだろうが、しかし同じ血が流れている人たちと仲良くしたいのは自然の情である。
 先ずは叔父さんの二人の息子さんと接触を始めた。この従弟たちは、大昔、南武線稲田堤で数年間近所に暮らしたのでとりわけ懐かしい従弟たちである。ただ残念なのはいつも優しくて明るい悦子おばさんが先年亡くなられたことで、叔父は現在一人暮らし。しかし87歳になるのに今も水泳を欠かさず、すこぶる元気で、糖尿と皮膚炎(忘れてた、難聴も)患っている私など足元にも及ばない元気さである。
 この二人の従弟たちでうっすら覚えているのは、優しい叔母さんに甘えている二人の幼い少年たちであったが、現在兄の方はもう少しで定年を迎えるサラリーマン、そして弟の方は、な、なんと今は新宿区落合のかなり大きなクリニックの院長さん(千葉大医学部、放射線科)で皮膚科もアレルギー科もあるので、そのうちオフの時を狙って皮膚炎についてアドバイスを貰おうなどと考え始めました。改めて考えてみると、母方の従弟に北海道は十勝上士幌町で「赤ひげ」ならぬ「はげあん」診療所を経営しているもう一人の従弟(北大医学部、整形外科)、さらにその子供たち、私からすれば従弟甥・姪に数人の医者がいるという家系になってました。ありがたい(何が?って糖尿、皮膚炎の爺さんにとって実際にお世話にならなくても心理的に安心です)
 嬉しい話てんこ盛りなどと銘打ちましたが、汚い爺さんの皮膚炎(いえ汚いのは爺さんではなく皮膚炎の方ですよ)がらみの話がまた出たところで、他の話は別の時にでも。
 ついでですから従弟のクリニックのことがネットに出てましたので、宣伝がてら(繁盛してるので宣伝無用かも)その箇所そのままコピーしましょう。

 東京メトロ東西線・落合駅そばの「落合駅前クリニック」は内科の他、小児科、皮膚科、アレルギー科、外科も標榜する。患者の主訴は、風邪や腹痛、生活習慣病の他、ニキビやアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、切り傷、擦り傷、やけどなどの外傷が主だ。安藤策郎院長のモットーは「何でもすぐに診る地域のかかりつけ医」。日曜日にも診療し、患者個々の生活背景や思いをくみ取りながら、その人に合った治療を行うことを心がけている。勤務医時代は放射線科に所属し、さまざまな病気の画像診断を行っていた。「今後も自分の目の届く範囲できめ細かな診療を行いたい」と院長は話している。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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嬉しい話のてんこ盛り への1件のコメント

  1. 阿部修義 のコメント:

     早いもので明後日から師走です。日本国内外の問題は山積するばかりで、どこの国も自国の利益が都合よく回ることしか考えていないように思います。やはり、どこの国も他国のために何かを骨折ってまでやろうとする姿勢でやっていけば、世界はもっと住みよい社会になるんじゃないでしょうか。要するに愛がないんです。書棚に『人間この未知なるもの』があったので久しぶりにページをめくっていましたら、こんなことが書かれてありました。

     「一般に、治してもらう患者が自分のために祈ることはない。他のために祈るのである。そういう種類の祈りには、完全に自己を放棄することが要求される。つまり、禁欲の高度な形態が要求されるのである。謙遜な人、無知な人、貧乏な人の方が、金持ちや知性の高い人よりもこの自己否定に耐えうる。祈りがこのような特性を帯びると、不思議な現象が起こり始めることがある。それが奇蹟である。」

     この「奇蹟」が実際にあるのかは私にはわかりませんが、高名なカレル博士がそう言っているわけですから、そういうこともあると考えれば、先生が試されている聖水にも効力があるかも知れません。他者への無償の愛(現実には極めて難しいこと)には何らかの神的な力が働くという考えは決して否定できないものだと私は思います。

     東京で開業されている先生の従弟さんの安藤院長に、先生も是非相談されてください。その道で生涯研鑽された専門医から素人にはわからないすばらしいアドバイスが聞けるかもわかりません。治療方法も新しいものも最近は出てきてますから良い展開につながるかも知れません。先生の皮膚炎が治癒されることを祈っています。

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