難儀な時代

シャワーも使えないで、どれだけ臭くなってるんだろう、と心配いただいてるかも知れないので、例の給湯器故障のその後を先ずご報告しましょう。昨日、予定通り、昼過ぎに仙台から若いさわやかな仕事人がやってきました。台所に案内して、私はその間、二階居間に。30分後ぐらいでしょうか、インタホンがなって終わりました、との連絡。どういう原因か聞いたところ、残湯装置とその表示がうまく連動していなかったので、そこの部品を取り替えたとのこと。
 それでお代は? と聞くと、いえ今回は無料で修理させていいただきました、との思いがけないお返事。無料というので感激したわけではないが(いやどう考えたってそうだろ)日本も捨てたもんでないっすなー(おや話はそこに行くんだ)。してお名前は?と聞く間もなく、彼は合羽翻して帰っていきました。いや正確に言えば、無料と聞いて唖然としているうちに、すばやく玄関前に停めていた車に乗ってにこやかに去っていったのであります。仙台のサンヨー・サービスとかいう会社、まっ調べようと思えば柴田町の会社に問い合わせればいいわけだ。
 だから昨夜、美子を何日かぶりに無事シャワーで洗ってやりました。やっぱ、たまには体を洗ってやるもんですなー、めっちゃ気持ちよさそうに、美子はふだんより早く寝ましたです。
 そんなこともあって、ご存知の通り、昨日を期して発令された、例の緊急時避難準備区域の指定解除のことなど、改めて思い出す暇もありませんでした。だいいち、そんなことは早くも四月あたりから主張してきて、正直言ってなにを今さら、と思うだけで、殊更の感慨などどこを探しても出てきませんでしたが。
 ところで今日の午後、先日の図書館コンサートで初めてお会いした福島民報の松崎記者が訪ねて来られ、いろいろ話し合っているとき、ショッキングな話を伺った。つまり話がたまたま日本郵便の業務再開に及んだとき、実はあれには南相馬を訪ねてきた国民新党の亀井静香議員が、なに業務再開してない? けしからん、とその場で東京に電話して即刻の事態改善を命じた、そしてわずかその二日後に(四月二十六日でしたか?)一挙に事態が動いたと言うことである。ショックというのは、私たちがメール攻勢をかけるなど、シャカリキに頑張ったのに微動だにしなかった総務省などの政府機関が、かつての所轄大臣でしたか?の鶴の一声でいとも簡単に動いたと知ったからである
 役人たちは少し個性的なというか、つまり良い意味でも悪い意味でもクセのある上司にはひとたまりもなく靡くということだ。それと較べてデモや署名運動が実に緩慢な効果しか持っていないことに時に絶望的にならざるを得ない。確かに亀井静香議員とか都知事とか、強烈な個性を持つ政治家がいないことも最近の政治的空洞化現象の原因の一つかも知れない。もちろん、だからといって、そういう政治家の登場を待望する方向に流れることも、また逆の意味の危険を伴うことも事実
 私のように、日ごろから政治に背を向けた生き方をしているのも駄目なんだろうし、日本の将来を考えると、まっこと難儀な時代になってきましたなあ。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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