手痛いしっぺ返し

たっぷり一月半以上休んでしまった。休み?確かにこのモノディアロゴスとは疎遠だったが、しかし休んだ気はしない。なんだかやたら気が急いた一月半だった。
 二〇年近く、職場での健康診断さえ受けないばかりか、バイク事故で転倒したときも、左腕が上がらないまま数年間放置し、結局は直して(直って?)しまったことを誇ってきた。自然治癒力なる得体の知れぬ能力を信じてきた、といったら格好のつけすぎか。要は単純な医者嫌い、いやもっと正確に言えば、自分の体に異変が起こることへの並外れた恐怖心。
 そんな生き方に対する手痛いしっぺ返しがきた。糖尿病の発覚である。近親者に糖尿を患った人はいないので、遺伝ではなかろう。するとストレスか?しかし自覚症状が無いのがこの病気の怖いところ。つまり発病がここ数年のことに間違いはないとしても、それがいつからか特定できないわけだ。
 ただ負け惜しみでなく今回の発覚は結果的に良かったと思っている。つまり自覚症状のないまま、いつかドカンと合併症でヤラレるより数段上等だったということだ。今のところコレステロールが少々高め(?)であること以外、血圧も腎臓も問題ないそうだ。幸いなことに近くに信用のおける医者がいて、月一度の診察と、処方される錠剤を朝晩飲むだけである。
 いやいや、もちろん生活習慣病なのだから、生活そのものの改善が重要。それで現在、過食・暴飲暴食を避け(もともとそんな習慣はなかったが)、適度な運動を心がけている。具体的には、ご飯は軽く一膳、パンは一枚、酒は飲むとしても焼酎のような蒸留酒を。間食はほとんどしない。
 運動としては毎日歩くことにした。しかし家から夫婦そろって出かけていくのは、いかにも健康増進の散歩っぽくて嫌だから、まず車で近くの公園に行き、美しい自然の中を30分ほど歩いてくる。
 ところが、である、体重はほとんど減らないのだ。ただ、心なしか階段の上り下りが楽になったり、下腹部のポッコリが無くなりつつある。
 ひさしぶりの登場だというのに、今日は下らぬ健康談義に終始してしまった。明日は近く断行する大連への四泊五日の旅についてでも語ろう。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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