電気信号を筋電位へ

昨日、たしか夕方近く、どこかの民放番組で、脳から出る電気信号を義手に伝える実験を紹介していた。先天的に右手首がない可愛い小学生の女の子に義手をつけようと苦心惨憺、ネックであった軽量化にもやっと成功して、女の子は長年の夢であった茶碗を持ってご飯を食べることに成功するという感動的なドキュメントだった。
 あれは何という番組であったか、できればもっと詳しく知りたいと、昨日の新聞のテレビ欄を見てみたが、番組紹介もないので、何チャンネルの何時の、どんなタイトルの番組だったか調べようがない。いや、調べようがあるのである。以前はヤフー頼みだったが、現在はグーグル頼みで、さっそく「テレビ 義手 女の子」で検索。かんたんに見つかった。TBS系(当地ではテレビュー福島)午後6時半からの、「東大の感動ハイテク2」という味も素っ気も無いタイトルの番組であった。TBSでは「夢の扉」というレギュラー番組だそうだ。
 なぜそんなことに突然興味を持ったか、というと、まずは十日ほど前から私自身の右手というか指先が不具合であることがきっかけである。つまり前から油が切れたみたいに右人差し指の関節の動きがぎこちないと思っていたら、このところ、小指もまるで突き指したように、曲げるときにうまく曲がらないのだ。でも月一度診察してもらっているクリニックでの血液検査でも、尿の検査や胸部のレントゲン撮影、血圧検査、そのいずれも数年前からの少し高めの血糖値以外、特に問題はないのだ。だからそれほど心配はしていない。
 いやはっきり言えば、私自身の指の状態より、妻の最近の不思議な行動から興味を持ったのである。つまり、たとえば先日のように、飴のような小さな物を渡そうとしても、指先のものをなかなか捕まえられないのである。テレビでは、手首から先がなく、いわば棒状になった手首の先にいくつかセンサーを付け、脳からの指令を義手に伝えるようにしていた。専門的に言えば(このあたりはネットの解説の受け売りである)要するに右手首に「筋電位」というものが存在するから、脳の命令が伝わるわけだ。ということは、妻の場合、その肝心の脳の部分で指令する細胞が無くなったか減少したということなのだろう。ということは、乱暴な推理かも知れないが、右手首なら右手首にある筋電位を刺激することによって、脳細胞が活性化することもありうる、ということだろう。一般的にリハビリというのは、そのあたりのメカニズムを利用した治療法ということか。
 今のところは散歩しかやっていないが、お手玉とかオハジキのような、手先を使う遊びでもやらせようか。以前、剣玉をやらせようとして長続きしなかったので、以後なにもしてこなかった。ダメモト(おーなんと懐かしい言葉!)でもう一度(いや何度でも)挑戦してみよう。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学など他大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、死去(享年79)
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