民営化?そんなの関係ねーっ!

午後2時半ころ、ネット古本屋に送金するため休日の郵便局に出かけた。あいにく手元に払込取扱票がなかったが、3時前だったら休日用の、と言うのか夜間用(緊急用?)の窓口が開いてるはず、と行ってみたのである。窓口に出てきた若い女性局員(とは今は言わないか?)に、用紙を下さい、と言ったが、ここでは取り扱わないこと、日本郵便さん(と言ったか?)のATMコーナーからインタホンで係員を呼び出してみてください、と言う。
 言われた通りにインタホンをかけてみたが何も応答が無い。それでも頑張って待っていたら女性が出てきた。用件を告げると、すみませんこちらは仙台です、なんてことを言う。えっ仙台!、ともかく原町に至急連絡して下さい、と言ったが、伝わったふうではない。もう一度休日用の窓口に戻って、民営化で組織がどう変わったかなんてこっちには関係ない、誰かを呼び出してくれ、と語気を強めたら、男の局員(とは呼ばないのかな、あゝヤヤコシ)がついてきた。その彼がカーテンの引かれたガラス戸を強く叩いていたら、やっと初老のおじさんが出てきた。
 対応の仕方ではこっちの瞬間湯沸し器が沸点に達するかな、と恐れていたが、なんとも気のよさそうなおっちゃん。休日用に駆り出された臨時職員らしい。いつもなら臨時であろうが正式であろうが、そんなの関係ない!と怒鳴るところだが、このおっちゃんにはそんな剣呑なことはできない。このおっちゃん、カウンターの中に入って、静まり返ったオフィスの書類ケースなど探してはくれたが、結局分からず仕舞い。いいよいいよ、明日局長にきっちり抗議しておくから!
 民営化で組織が分かれたとかなんとか説明する分かりにくいビラをもらったような気がするけど、そんなことこっちにゃ知ったこっちゃない。組織が分かれたっちゅうなら、建物別にせんとあかんやろ!こういうこと何て言うか知っとる?同じ穴の狢っちゅうんや。
 地方の小都市でさえこんな混乱というか不自由があるんだから、過疎地みたいなところでは住民はさぞかし不便を感じているんだろうな。なにが民営化や!あのパフォーマンス男の小泉、こういうことまできっちりフォローしなけりゃ無責任もはなはだしい。組織改革の掛け声は勇ましいが、実態はこんなもんや。組織をどんなにいじくり回しても、働く人間の意識改革がなければ全てもとの木阿弥。
 最後にもう一言。以前はATMの側にいつも取扱票があったはず。それが民営化が動き始めてからいつのまにかケースは常にカラになった。あんな用紙盗む奴もいたずらする奴もいないぜ。考えられる理由はただ一つ。まっことケチクサーイ根性。つまりATMを使わせるより窓口を通した方が手数料取れるからと違う?郵便局は新しく変わっても、サービスはこれまで以上に頑張りまーす、なんて言ってなかった?笑顔で挨拶もいいけど、もっと大事なのは本気で利用者のこと考えるのと違うの?
 ともあれ、このモノディアロゴスの文章、局長宛てに送ってみます。いや切手代がもったいないから、明日窓口で渡してきます。さてどんな反応が返ってくるか、ほんと楽しみ!

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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