朝から愚痴

昨日から例の「焼き場に立つ少年」の写真にスペイン語のキャプションを付けて、スペイン語圏の友人たちに送っているが、今朝もメキシコとスペインから大きな反響が戻って来た。それにしてもここのブログの友人たちは何と反応の遅いこと。何も感じなかったとは思いたくないが、そして深く感じたまましばらく言葉に出せないのかも知れないが、正直アホらしくなってきた。といっても、もともと自分が生きるための探照灯として書いている*のだから、文句は言えないか。埴谷雄高流に、この世の外ならいずこなりと、とも言えないし、まっ人の世なんてこんなものかな。
 ちなみに下手なスペイン語キャプションは以下の通り。

 Un niño que espera su turno en el crematorio para su hermano muerto en su espalda. Es la foto que tomó un fotógrafo americano Joseph Roger O’Donnell después del bombardeo atómico en Nagasaki. La tristeza del niño sólo se expresa en sus labios mordidos y rezumados de sangre.

※ あの少年が誰であったか、結局は不明のようですが、或る人が背中の赤子は妹では、と言ってきました。なるほど当時男の子はみな坊主頭でしたから、妹でしょう。早速スペイン語の男性名詞 hermano を hermana に変えました。
 私としては、悲しみがさらに大きくなりました。

※※ NHKの番組を見ると、やはり弟らしいので、再度訂正します。

★★ 13日の追記 昨夜たまたまひねったテレビで、カナダ在住のヒバクシャ・サーロー節子さんのことを初めて知りました。ネットで検索すればすぐ出てきますので、まだの方はぜひご覧ください。今回の核兵器禁止条約への日本不参加の愚かしさに改めて怒りを覚えます。



* 父の死後、柳美里さんが父への追悼のお便り(メール)をくださったが、その中で柳さんは父を「佐々木孝さんは、言葉の人でした。言葉を自分の前に灯火のように掲げられて歩まれた方でした」と評してくださった。(2020年12月25日息子記)

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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朝から愚痴 への2件のフィードバック

  1. 阿部修義 のコメント:

     ユーチューブにNHKスペシャルで「焼き場に立つ少年」がありましたので視聴しました。この写真の感想を言葉にするとすべてが空しく、唯々、生存されていれば先生と同じお年なんだとご健康で生きて居られることを祈るしかありません。オダネルさんが、この写真を晩年公表されたことはアメリカ人にとっては不快なものだったんでしょう。現に奥様とは、それがきっかけで離婚されています。しかし、原爆直後での悲惨極まりない光景、そこに生き残った日本人の姿を終生忘れようとしても消し去ることができなかった、まさに悪夢に悩まされた生涯だったと本人も述懐されていました。人は欺けても自分自身は決して欺けない。人間としての良心がそこにあったんだと私は感じます。番組の最後でオダネルさんがこう言われていました。

     たとえ小さな石であっても
     波紋は広がっていく
     それは少しずつ広がり
     いつか陸に届くはずだ
     アメリカという陸にも
     届く日がくる
     誰かが続いてくれれば
     波紋はさらに広がっていく
     そしていつか 誰もが平和を
     実感できる日が来ると信じる

  2. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    ありがとう!阿部さん!
     ユーチューブにNHKスペシャル「解かされた封印 米軍カメラマンが見たNAGASAKI」があったこと全く知りませんでした。さっそく見ましたが、頻繁に音声が途切れるのは私のパソコンのせいだと思ってましたがそうではないらしいですね。放送されたのが2015年10月6日ということですが、これも全然知りませんでした。ともかくいつものように阿部さんの追求力はすごいです。
     音声が不調なので、途中までしか見てませんが、あとからゆっくり見るつもりです。オダネルさんは背中の赤子を弟と判断したようなので、彼の意見を尊重しましょう。番組の表題が「解かされた…」となっているのがどうしてか不思議ですが、全部見終わったら分かるのでしょう。皆さんもぜひご覧ください。

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