なんとも腹立たしい!

今しがた(18日夜9時半)NHKテレビを見ていたら、屋内退避地域へ運送業者たちが入りたがらない事態をどう考えますか、と聞かれた偉い先生(名前は知らない。なかなか格好いい若い男。後から調べたら関村直人東大教授)が「短時間の作業で、車の中や屋内にいるぶんには危険ではない」などとのたもう。この種の発言はもういやになるほど繰り返されている。そして続いて福島市で、ものものしい白い防護服で身を固めた数人の係員の前に、不安がって放射能の値を調べてもらう人たちが長蛇の列を作っている映像を流す。しかし公式に発表された、健康に「ただちに」(結果的にはさらに不安感を増幅させる不思議な副詞!)危険は無いらしいマイクロ何とかという数値からすれば、この南相馬市はその福島市の五分の一の数値しか示していないのである。
 つまりアメリカはこの事態を終息させるために全面的に応援すると言うオマハ(だっけ?あっオバマか)大統領が、自国民に80キロの外に避難するようにとのメッセ-ジを同時に発信しているのと同じである。アメリカ人の場合は仕方がないとしても、当該地域にいる人間にとって、この種の発言ほど腹立たしいものはない。少なくとも現段階では、わが原町区や鹿島区に物資を届けに入ってきてもまったく健康被害は無いはずである。それをはっきり発信してもらわなければ、住民の不安や外部からくる人の不安をさらに増幅するだけである。

自衛隊? やっぱ軍隊ではなかった!

 昨日、空からヘリコプターで放水した自衛隊機見た? 高ーいところからふらふら小便を引っかけるような放水を四度やって早々に退散したみっともない自衛隊機。鉛の床を張り、完全防護の服で身を固めて行ったにも拘らず、自衛隊の内規に定められた数値に達したから作業中止だと! おいおいこれが軍人かい? つまり強力無比な敵軍を前にして、進めばヤバイので、しかも勤務時間がきまっているので、ハイ今日はこれまで、といって戻ってくるの? これ立派な敵前逃亡とちゃう? 私は軍隊なんて無用の長物、自衛隊なんぞ災害救助隊に編成しなおすべきと思っているが、その私でもこの腰砕けの、サラリーマン根性以下の「軍人」たちの体たらくに、情けなくてほんと涙が出てきますぞい。
 危険な場所で150人の東電社員と協力社員(でしたか)が命がけで作業をしているというのに、この軍人たちの見上げた(つまり見下げた)態度! 協力社員? きれいごと言うじゃない、要するに下請けの人たちだろ? 上級社員は社長以下すべて安全な東京から遠隔操作。前から言ってきたことだけど、もし騒ぎが収まって、原発再開を画策してるとしたら、社長以下すべての上級社員の家族は原発周辺に住むことを義務付けなければなるまい。それまで安全を主張するなら、そんなこと当たり前でしょ!
 さてこれを殴り書きしているわが家の周囲は正に死の静寂に包まれている。市民の八割以上が、県内の30キロ外のところや、隣県の新潟などに避難したためだ。その避難はたぶん明日も続けられるであろう。そのとばっちりは、市内の病院や介護施設全般に及んでいる。わがばっぱさんがお世話になっていたグループホームでもスタッフの大半が避難し、わずか三人しか残っていない。そのため入所者を引き取ってもらえないかとの連絡。勿論そんなところにばっぱさんを預けておくはずもない。今日の午前中、車で迎えに行き、無事わが家に連れ帰った。これで安心。しかし冷静に考える私のような人間がこの町にせめて半分でもいれば、町の機能がこれほどまで壊滅しなかったはず。だれも言う人がいないが、はっきり言おう。これは立派な職場放棄。老人たちを残して自分の身の安全をはかったというわけだ。ばっぱさんを連れ帰るとき、二人のおばあさんと一人のおじいさんが不安そうな顔で私たち親子の姿を羨ましそうに見ていた。明日あたりわずか数キロのところにある別の老人施設に移動させられるらしい。思わずひとりずつの両手を握って、安心して、またすぐ会えるから、としばしの別れを告げてきた。たぶん引き取るべき家族は今回の津波かなにかで引き取れなかったのだろう。でもこれって、ものすごく恥ずかしいことと違う? 
 まだ放射線でだれも被害を受けていないのに、移動途中たらい回しされて死んだ病人や老人たちがはや四、五十人も出ている。美子の母が世話になった施設の親病院では付き添いも無くたらい回しされた病人が何十人も死んだ。これって、だれも言わないけれど、立派な過失致死に相当する犯罪とちゃう?
 これ以上書き続けると憤死してしまうから今はこのへんで止めときます。日本人は共助の精神ゆえに諸外国から尊敬されている? 実情は以上のとおりだ!


【息子追記】コメントのやり取りをここに転記しておく。

ktm のコメント:
2011年3月21日 22:03
少し違和感を感じたので書きます。
あなたはあの自衛隊ヘリコプターが「ふらふらと小便を引っかけるような放水」と書かれましたが、傍目には確かにそうです。 確かにみっともない飛び方です。 でも、本当に「腰砕けの、サラリーマン根性以下の「軍人」たち」なんでしょうか。 国民を守る、国を守る気概がなければいかに防護されたヘリに乗っていても事故を起こしていつ爆発するか分からない原発の上を飛べますか? もし仮に上空を飛んでいる間にまた爆発があればヘリもろとも木端微塵です。
あなたの言うのは大戦末期の特攻精神をがなり立て自分は特攻しなかった海軍の偉いさんを思い出させます。 戦後はのうのうと代議士にまでなりました。
原発の上でちゃんと放水できる胆力と技量を持ち合わせているヘリ・パイロットが日本に何人いるのでしょう。 その貴重なパイロットを無駄死にさせたら代われる人材はいるんですか? その時に米軍のパイロットが飛んでくれるんですか? そんな筈ありません。
今も危急な時ですが、今後どんな事態が起こるか分かりません。 それに対処していくためにも貴重な人材を無駄死にさせてはいけないはずです。 日本人は第2次世界大戦でそれを学んだのではないのでしょうか。
東電社員も自衛隊員も警察員も消防隊員も、みんな家族を持ちながら一生懸命頑張ってくれているのではないのでしょうか。 その姿勢に水を差すような事はしたくありません。
ただただ感謝です。

返信
fuji-teivo(佐々木孝) のコメント:
2011年3月21日 22:44
自衛隊と言えども軍隊に変わりはありません。つまり国民の生命財産を守ることをその唯一の存在理由とする組織です。もちろん私は無駄死にせよ、と主張しているわけではありません。しかるべき好機をえらんで、しかも国民を守るために★死を決して★行動するつもりだったのなら、なんの異論もありません。それはそれで賢明な決断だったわけです。しかしあの時、実行主体やコメントする人がそういう深慮のもとでの行動であることを明確に説明しないまま、その大事な一点に一切言及しないまま「実況放送」をしたことに、それこそ「違和感」を覚えたわけです。
ともかくあなたも私も、とくに被害地にいる当事者としての私には、自分の考えを率直に述べる権利があります。それ以上のことは、たぶん政治や国のあり方に対する考え方に根本的な違いがあるのでしょう。そうでしたら私には、特に今、あなたと議論するつもりも余裕もありません。悪しからず。

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佐々木 孝 について

佐々木 孝(ささき たかし、1939年8月31日 – 2018年12月20日)は、日本のスペイン思想研究者。北海道帯広市生まれ。2歳から引き揚げまでの5年間を旧満州で暮らす。1961年上智大学外国語学部イスパニア語学科在学中にイエズス会に入会。5年半の修道生活の後、1967年同会を退会、還俗する。同年上智大学文学部哲学科卒業。1971年清泉女子大学講師、助教授を経て、1982年教授となる。1984年常葉学園大学(現・常葉大学)でスペイン語学科の草創に参加。1989年東京純心女子短期大学・東京純心女子大学(現・東京純心大学)教授。その間、講師として専門のスペイン思想、スペイン語を東京外国語大学、駒澤大学、法政大学、早稲田大学などの大学でも教える。2002年、定年を前に退職、病身の妻を伴い福島県原町市(現・南相馬市)に転居。以後16年にわたり、富士貞房(ふじ・ていぼう、fuji-teivo、――スペイン語のfugitivo「逃亡者」にちなむ)の筆名で、専門のスペイン思想研究を通じて確立した人文主義者としての視点から思索をつづったブログ「モノディアロゴス(Monodialogos: ウナムーノの造語で「独対話」の意)」を死の4日前まで書き続けた。担当科目はスペイン思想、人間学、比較文化論、スペイン語など。作家の島尾敏雄は従叔父にあたる。 2018年12月20日、宮城県立がんセンターで死去(享年79)。
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なんとも腹立たしい! への3件のフィードバック

  1. ktm のコメント:

    少し違和感を感じたので書きます。
    あなたはあの自衛隊ヘリコプターが「ふらふらと小便を引っかけるような放水」と書かれましたが、傍目には確かにそうです。 確かにみっともない飛び方です。 でも、本当に「腰砕けの、サラリーマン根性以下の「軍人」たち」なんでしょうか。 国民を守る、国を守る気概がなければいかに防護されたヘリに乗っていても事故を起こしていつ爆発するか分からない原発の上を飛べますか? もし仮に上空を飛んでいる間にまた爆発があればヘリもろとも木端微塵です。
    あなたの言うのは大戦末期の特攻精神をがなり立て自分は特攻しなかった海軍の偉いさんを思い出させます。 戦後はのうのうと代議士にまでなりました。
    原発の上でちゃんと放水できる胆力と技量を持ち合わせているヘリ・パイロットが日本に何人いるのでしょう。 その貴重なパイロットを無駄死にさせたら代われる人材はいるんですか? その時に米軍のパイロットが飛んでくれるんですか? そんな筈ありません。
    今も危急な時ですが、今後どんな事態が起こるか分かりません。 それに対処していくためにも貴重な人材を無駄死にさせてはいけないはずです。 日本人は第2次世界大戦でそれを学んだのではないのでしょうか。
    東電社員も自衛隊員も警察員も消防隊員も、みんな家族を持ちながら一生懸命頑張ってくれているのではないのでしょうか。 その姿勢に水を差すような事はしたくありません。
    ただただ感謝です。

  2. アバター画像 fuji-teivo のコメント:

    自衛隊と言えども軍隊に変わりはありません。つまり国民の生命財産を守ること
    をその唯一の存在理由とする組織です。もちろん私は無駄死にせよ、と主張して
    いるわけではありません。しかるべき好機をえらんで、しかも国民を守るために
    ★死を決して★行動するつもりだったのなら、なんの異論もありません。それは
    それで賢明な決断だったわけです。しかしあの時、実行主体やコメントする人が
    そういう深慮のもとでの行動であることを明確に説明しないまま、その大事な一
    点に一切言及しないまま「実況放送」をしたことに、それこそ「違和感」を覚え
    たわけです。
    ともかくあなたも私も、とくに被害地にいる当事者としての私には、自分の考え
    を率直に述べる権利があります。それ以上のことは、たぶん政治や国のあり方に
    対する考え方に根本的な違いがあるのでしょう。そうでしたら私には、特に今、
    あなたと議論するつもりも余裕もありません。悪しからず。

  3. ktm のコメント:

    現場の方々にはただただ感謝してますが、
    今まで原発は安全だと言い、推進してきた自民党、元通産の役人や経産省の役人、東電の幹部経営層にはとても不信感を持っています。

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